当時、このお店のキッチンスタッフとして働いていた、友人の古賀真人くん。(今は別のお店でシェフとして腕を奮っています)
~ 友の偶然から最高のロケーション。『プラナバルカ』 ~
当時、このお店のキッチンスタッフとして働いていた、友人の古賀真人くん。(今は別のお店でシェフとして腕を奮っています)
彼が上京して来た時に友人の紹介で知り合い、家が近かったこともあり、頻繁に散歩する仲になっていました。
「こんなタイミングで会えるの嬉しいね~」と、コーヒーで乾杯です。びしっとコックコートを着こなすその姿に、少し緊張したことを覚えています。
たしかあの日も、ここに座ってコーヒーを飲んだよね。
長村航希さん(左)と古賀真人さん
この頃、ある重要なシーンのロケ地がまだ決まっていませんでした。
デリバリー配達の仕事を始めた兄と、東京の企業に就職し上京してきた妹が、あるお店でたまたま出くわし、近況を語り合うという場面です。
「お店ならどこでもいいんじゃない?」と思っていたのですが…。
ちょっとシーンの設定と共にお話ししますね。
妹の葵は、憧れの東京に就職してきたばかりという設定で、この場面の始まりでは、打ち合わせの相手を待っているという状況です。コロナ禍、デリバリー配達の仕事を始めた兄に対して、不安定な生活を送っているのではないかと心配しています。
そこにたまたま、注文の品を受け取りに来た兄が現れます。
きっとその時の葵は「仕事仲間に見られたくない」「なんか恥ずかしい」と、一瞬でも思うのではないかと想像していました。脚本上でも、話しかけるのは兄・陸からになっています。
注文の品を受け取りに来た配達員の兄・陸は、お店の外で注文の品が出来上がるのを待ちます。
例えば、店内で妹を見つけ「おぉ、何してんの!」と、ズカズカ近づいていくこともなくはないですが…
他のお客さんにもお店にも迷惑ですし、キャラクター的に無理があるように思えました。
ほんのちょっとしたことなのですが、この二人の会話が自然に始まるようなシチュエーションを、なかなか見つけられずにいたのです。
せっかくお茶しに来たのに、頭の中は映画のことでいっぱいでした。そんな相談を古賀くんにしてみると「お店の横にスライドして開くドアがあるよ」と、教えてくれます。
このドア近くの席に座る妹と、注文の品が出来上がるのを外で待つ兄。
ガラス越しに兄が気付き、外から話しかける。
これなら成立しそうだ!
古賀くんのナイスアイデアに、とっても助けられたのでした。
本編ではこのように、兄がガラス越しに話しかけるところから会話が始まります。こんな風に覗き込まれたら恐怖ですが、劇中では少し笑えるポイントになっていると思います!
葵(藤井武美)と陸(長村航希)
「プラナバルカしかない!奇跡が起きた!」
喜びは束の間、一つの不安が頭をよぎります。
古賀くんがオーナーさんと繋いでくれて、後日お話しを聞いてくださることになりました。撮影までの時間は、もう多く残されていません。
今思えばそんなこと考えても仕方がないのに(笑)やはり生きた心地のしない数日間だったのでした。
そんな不安は、オーナーさんとお会いして一瞬で吹き飛びます。
手に汗を握りながら、映画の撮影について一通り話終えると…
「ぜひ、好きに使ってください!」と、あっさりOKを頂くことができました。
中央区のみなさん、寛大すぎやしませんか?
前回ご紹介したSOHO30のオーナーさんと、同じセリフではないですか。
「#中央区あるある #好きに使ってください」の法則が、この街にはあります。
過去に俳優活動をしながらアルバイトをしていた方がいたことを話してくださり「こういう活動はぜひ応援したいです」と、心強い言葉をいただきます。
僕も三澤監督も、絶対に良いシーンを作るぞ!と、心に誓ったのでした。
迎えた撮影当日。
早朝からの屋外ロケは冷えるからと、撮影後に温かいお弁当を用意してくださいました。心も体も温まるとはまさにこのことで、みんなでおいしく頂きました。
本当に本当にありがとうございました。
当日の撮影風景
朝早くからお店を開けてくれた古賀くんは、お店の仕事があるにも関わらず、色々と協力してくれて本当にありがたかったです。一日の撮影を終えて夜の古賀くんに会いに行くと、さすがにクタクタな様子でした。
本当に色々とありがとう!これからぜひスクリーンで観てもらって、感想や思い出を語り合えたらいいな。
古賀さんとAP小山さん(第一回参照)
そうそう。
プラナバルカでは店内に展示する作品を随時募集しているそうです。「食」「音楽」「アート」のコラボレーションが、一つの場所で行えるなんてすごく贅沢ですよね。
アイデアをお持ちの方は、お食事がてら相談に行ってみるのも良いかもです。
ロケ地としての貸し出しも大歓迎ですと、オーナーさんおっしゃっていましたよ!
地域企業・団体に協賛いただいてます
長村航希 (区民ライター)
2003年に劇団四季『ライオンキング』ヤングシンバ役でデビュー。代表作に『ゆとりですがなにか』『詐欺の子』などがある。2023年には新国立劇場「エンジェルス・イン・アメリカ」への出演が決定している。