中央区民マガジン

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【中央区 和みの散歩】「御菓子司 東海」のワッフル(日本橋人形町)(2/2ページ)

~ 和菓子一筋74年!激動の時代を乗り越え、人形町の変還と共に ~

2022.07.31
文、撮影:柳谷 ナオ

(1/2):和菓子屋さんのワッフル?

(2/2):卒寿を迎えた2代目の田所遜さん ←NOW!

戦争、疎開、そして人形町

「戦前は1丁目でお店をやってたんだよ、近くに中華料理屋さんがあってね。でも、戦争がはじまっちゃったから。」
「戦争中は家族で疎開してね。修善寺(静岡県)の温泉街では、温泉まんじゅうやらお土産を売ってたの。」

と、今年90歳・卒寿を迎えた2代目・田所遜さん。

16、7歳の修善寺にいた頃から先代であるお父様を手伝っていたそうです。そして終戦後、20歳の頃に現在の人形町へとUターン。

「父が手が不自由だったというのもあって、少しは修行したけれどそんなに沢山あちこち行かなかったね。だから父から全部教わった。」

店名の由来についてもお伺いしました。

「なんだったかなぁ。多分、疎開してた修善寺からつけたんじゃないかな。」

以前は看板娘の奥様・照子さんと一緒にお店を切り盛りしていらっしゃいましたが、現在はあんこの仕込みから製造、接客まで全てお一人でなさっています。私がプライベートでお伺いした際も、「これからあんこを仕込むの」「このあと水羊羹流すの」とお忙しそうでした。

「奥さんとは私が34歳のとき、彼女が26歳の時に結婚したの。修善寺時代一緒に過ごした幼馴染みたいなものでね。父の再婚相手の一族だったんだよ。彼女のお家は終戦後深川のほうでお店をしていて、全然和菓子屋さんとは関係なかったな。」

当時のことをお話しなさる度に、きりりとした目元が柔らかな眼差しに変わる田所さん。けれども、その柔らかさの中には懐古や優しさに混ざり、どこか寂しげな色合いが混ざっているように感じます。

「いつまで続くかなぁ。来年かな。」

と、うっすら日が陰る外を眺めながら呟く遜さん。

「同業者もかなり少なくなったし、同期と呼べる人達がどんどんやめてしまっていくと、そういう気持ちになっちゃうよね。寂しいというか、こればっかりは仕方がないというか。」
「大きい所は跡継ぎがいるからね。だから、大きい所しか残らない。」

田所さんにも息子さんがいらっしゃるそうですが、別な事業で活躍していらっしゃるので跡継ぎはいらっしゃらないとのこと。

「辞めないでください」とも「そうですね」ともしばらく言い返せなくなってしまった私。

伝統は紡いでいくもの。けれども、それに伴う努力は相当の物であり、傍から見れば順風満帆でも実際は日々試行錯誤を重ね精進していらっしゃるのでしょう。

伝統を紡ぐことは選択肢のひとつ。

田所さんの言葉は、誰かを責めるわけでもなく、かといってご自身を卑下なさるわけでもなく、90年という月日を過ごしてこられた中で積み重ねられた様々な出来事や感情からでたものだと思っています。

「わがままを言えば、もう少し長い間ワッフルを食べたいです。」

私が正直な気持ちを伝えると、「あらそう?」と笑顔を浮かべてくれた遜さん。

「それじゃあ、ちょっと水羊羹造りに戻りますね。冷めちゃうと固まって型に流せなくなっちゃうから。」

奥へと戻る遜さんへ御礼と「また娘と一緒に来ます!」とお伝えし、この日の取材は幕を閉じました。

この2、3年で世情は大きく変わり、閉店を余儀なくされた様々なジャンルのお店をたくさん見てきました。ですが、「東海」さんはそれとはまた違う寂しさが胸の中を行ったり来たり。

しょぼん、と猫背になってしまいそうな背中を、ふわふわで甘酸っぱいワッフルがそっとさすってくれるような気分に浸りながら、記事を書き上げたのでした。

御菓子司 東海
東京都中央区日本橋人形町1-16-12
03-3666-7063
東京メトロ日比谷線「人形町」駅A2出口より徒歩3分
火~土 8時30分~18時45分
(全て出揃うのは10時頃)
定休日 日・月

(1/2):和菓子屋さんのワッフル?

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柳谷 ナオ (区民ライター)

甘いものがなくちゃ始まらない! 中央区と和菓子とあんこが大好きな1児の母。 老舗から新参店まで、色んな和菓子と触れ合いたい。 好きな言葉は「あんこ」「もちもち」

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