と、今年90歳・卒寿を迎えた2代目・田所遜さん。
~ 和菓子一筋74年!激動の時代を乗り越え、人形町の変還と共に ~
(2/2):卒寿を迎えた2代目の田所遜さん ←NOW!
と、今年90歳・卒寿を迎えた2代目・田所遜さん。
16、7歳の修善寺にいた頃から先代であるお父様を手伝っていたそうです。そして終戦後、20歳の頃に現在の人形町へとUターン。
店名の由来についてもお伺いしました。
以前は看板娘の奥様・照子さんと一緒にお店を切り盛りしていらっしゃいましたが、現在はあんこの仕込みから製造、接客まで全てお一人でなさっています。私がプライベートでお伺いした際も、「これからあんこを仕込むの」「このあと水羊羹流すの」とお忙しそうでした。
当時のことをお話しなさる度に、きりりとした目元が柔らかな眼差しに変わる田所さん。けれども、その柔らかさの中には懐古や優しさに混ざり、どこか寂しげな色合いが混ざっているように感じます。
と、うっすら日が陰る外を眺めながら呟く遜さん。
田所さんにも息子さんがいらっしゃるそうですが、別な事業で活躍していらっしゃるので跡継ぎはいらっしゃらないとのこと。
「辞めないでください」とも「そうですね」ともしばらく言い返せなくなってしまった私。
伝統は紡いでいくもの。けれども、それに伴う努力は相当の物であり、傍から見れば順風満帆でも実際は日々試行錯誤を重ね精進していらっしゃるのでしょう。
伝統を紡ぐことは選択肢のひとつ。
田所さんの言葉は、誰かを責めるわけでもなく、かといってご自身を卑下なさるわけでもなく、90年という月日を過ごしてこられた中で積み重ねられた様々な出来事や感情からでたものだと思っています。
私が正直な気持ちを伝えると、「あらそう?」と笑顔を浮かべてくれた遜さん。
奥へと戻る遜さんへ御礼と「また娘と一緒に来ます!」とお伝えし、この日の取材は幕を閉じました。
この2、3年で世情は大きく変わり、閉店を余儀なくされた様々なジャンルのお店をたくさん見てきました。ですが、「東海」さんはそれとはまた違う寂しさが胸の中を行ったり来たり。
しょぼん、と猫背になってしまいそうな背中を、ふわふわで甘酸っぱいワッフルがそっとさすってくれるような気分に浸りながら、記事を書き上げたのでした。
御菓子司 東海
東京都中央区日本橋人形町1-16-12
03-3666-7063
東京メトロ日比谷線「人形町」駅A2出口より徒歩3分
火~土 8時30分~18時45分
(全て出揃うのは10時頃)
定休日 日・月
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