(1/2):手しごとと出来立てにこだわったバウムクーヘン
(2/2):人気店nelから若きショコラティエが独立
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人気店nelから若きショコラティエが独立
オーナーパティシエ 村田友希さん
お店を立ち上げたのは、現在もnelでシェフを務める村田友希さん(35歳)。長身で爽やかな印象、村田さん目当てのファンも多そうです。柔らかい口調でsuminozaをオープンするまでの経緯を語ってくれました。
「2019年にnelがオープンし、今年で6年目。雑誌、テレビなどのメディアでも取り上げられたこともあり、おかげさまで多くの方に認知していただけるようになりました。そんな中、コロナ禍で今後の展望について改めて考えていた時に、かねてから目標としていた『自分のお店を持つ』ということをぼんやりと意識し始めました。その時にnelでお世話になった浜町の人々とのご縁が切れるのは惜しいと思い、やはりお店を持つならこの町、浜町だと決めました。」
「浜町以外考えなかった」と語る村田さん
nelのチョコレートを使用するので、当然お店は近い方が良いと思いますが、人形町や水天宮エリアも魅力的なエリア。浜町にこだわった理由はなんだったのでしょうか?
「まず場所が大事なので、日本橋浜町、20~25坪、この2点にこだわり物件を探しました。工事をはじめるタイミング的にもここがぴったり合ったので、他の物件は見ずにすぐに決めました。」
浜町の話題になると表情が緩む村田さん。nelでの思い出を振り返りながらこう続けます。
「nelで出会った浜町の人々がとても優しくて。とにかく"日本橋浜町"の住所にこだわりました(笑)。nelの近くにお住まいで常連のご家族は、僕の誕生日にチョコを作ってくれたり、お手紙をくれたり。買出しに出かけていたら、道の反対側から『村田さ~ん!』と呼んでくれて手を振ってくれたり。都会にいながら人と人の程よい距離感、都会だけど古き良き人情がある町が浜町だと思います。」
実は京都出身の村田さん
店名であるsuminozaは、京都のご実家の横を通る通称 “ 炭之座通り ” に由来しているそうです。正式な名称の通り名ではなく、炭之座町に繋がる名もない道をご実家では“ 炭之座通り ”と呼んでいたらしく、村田さんは“名前がない道”というところから『未来に続く無限の可能性』というインスピレーションを感じ、お店の名前にしたそうです。
お店の軒先で優しく光るsuminozaのサイン
ルーツである京都にもいつかお店を持ちたいと語る村田シェフ。京都と日本橋についてこう語ります。
「京都は保守的と思いきや、新しいもの好きな町だと思います。食に関しても、パンやコーヒーの消費量は日本でもトップクラスです。新しいものを受け入れてくれる土壌は、浜町も似ているかもしれません。僕みたいな新参者に、浜町の皆さんはとても優しく接してくれますから。」
カウンター後ろの小窓から厨房が見える
もともとこの場所は、地元民に愛されたドイツパンのお店「タンネ」の厨房だった場所。タンネとしても地域のことを大切に思うお店が入居してほしかったに違いありません。タンネの意志を引き継ぐかたちでsuminozaがスタートしたのではないでしょうか。
「タンネさんから調理台や調理器具も譲り受けまして、厨房はほぼそのまま使用しています。タイミングよく巡り合った物件でしたが、結果的に凄く良かったと思います。」
スタッフの方と記念撮影
村田さんの言葉で印象的だったのが『町の人々の優しさ』というワードでした。そのせいか、村田さんが作るバウムクーヘンの味は、カカオの香りに包まれてふわふわに食感。なんだか優しい気持ちになれる気がしました。
村田さんのsuminozaオープンへの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。15歳からお菓子作りに目覚め、定時制の高校に通い、地元京都のお菓子屋さんで働いていました。ご両親は村田さんの進みたい道を見守り続けたそうです。ワールドチョコレートマスターズで世界一に輝いたショコラティエの水野直己シェフと出会い、村田さんはショコラティエになる道を決意。東日本大震災で上京の夢を一度断念し、ルクセンブルク、フランスでも修行を積み、コロナ禍も経験した村田さんの進む道は、決して安全で大きく広い道ではなかったと思います。ルーツである炭之座通りを浜町に重ねたのは、歩けば必ず誰かに出会う狭い道、その道の脇から応援してくれる優しい人々の面影なのではないでしょうか。村田さんの炭之座通りの旅はまだ始まったばかり。その旅は、カカオの香りがするほろ苦い優しい恩返しの味なのかもしれません。
カカオ菓子 suminoza(2024年8月10日オープン)
住所:中央区日本橋浜町2-1-5
営業時間:11時~18時
定休日:毎週火曜日・水曜日
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