平日は働く人達、休日ともなればショッピングやグルメを満喫する人達で溢れる中央通り。そこから一本入った、ややディープな”むろまち小路”に佇むビルの3階。
日中でもつい惹かれてしまうピンクのネオン「かんたんなゆめ」が目印です。妙に味のある階段を昇ると出迎えてくれるトレードマークの蠱惑的な女性のイラストを尻目に店内へ。
~ 醒めるからこそ、また見たくなる。儚く美しい甘い夢に会いに行く ~
平日は働く人達、休日ともなればショッピングやグルメを満喫する人達で溢れる中央通り。そこから一本入った、ややディープな”むろまち小路”に佇むビルの3階。
日中でもつい惹かれてしまうピンクのネオン「かんたんなゆめ」が目印です。妙に味のある階段を昇ると出迎えてくれるトレードマークの蠱惑的な女性のイラストを尻目に店内へ。
和モダンなテイストながらも木目の温もりにどこか落ち着く店内は、長テーブルのカウンター席とテーブル席が2つ。カウンターに鎮座している茶釜から覗く灯火と立ち上る湯煙が、より一層「和」の空間へと誘ってくれるかのよう。
かんたんなゆめは、和菓子3種類セット(1300円)が基本のコースとなっており、代名詞でもあるクリームチーズを使用した「嬉々」をはじめ、定番の和菓子や季節の和菓子の中から好きなものを選びます。和菓子の追加注文が可能なのも嬉しいですね。
オーダーは実物の和菓子を見ながら選べるのですが、これがまた選びやすいようでどれにしようか迷ってしまうというのも幸せな悩みの種。
和菓子barというだけあり、飲み物のラインナップも抹茶からほうじ茶、和光茶、グリーンルイボスティーなど拘りの銘柄がずらり。アルコールは八女茶ジンやほうじ茶ウィスキー、山椒サワーのほか日本酒2種飲み比べのご用意も。
平日は18時~23時、土日は13時~17時の営業時間となっており、時間を問わずアルコールも注文可能です。
嬉々「桜・花火・イチョウ・雪の結晶」
まずはお店の代名詞でもある「嬉々」。
目が合った瞬間、「かわいい!」と声が出てしまうような意匠が沢山。
練り切りあんに包まれたレモン餡と、心地よい酸味とコクの2種類のチーズがブレンドされたチーズクリーム、まさにレアチーズケーキのような爽やかな後味が続きます。
モチーフによってチーズクリームの形状を変えている細やかな配慮にも感動!
例えば、ころんとした夏の意匠「花火」はキューブ状のクリームチーズが芯として包まれておりますが、平らな葉をあらわした「イチョウ」は練り切りあんの下にスライスしたものを忍ばせてあるので、どこから食べてもチーズクリームを味わえます。
同じ嬉々でも、形によって最初の一口目の印象が変わるというのもまた一興。
ご自身が宮崎県出身ということもあり、宮崎県の名物「チーズ饅頭」が身近な存在だったというのも影響されているのかもしれない、と仰っていました。
「来る暮れ」
定番商品の「来る暮れ」は、シンプルなのに鮮烈なインパクトの真っ黒な胡麻の和菓子。粒あんに黒練りごま、乳製品を混ぜ合わせたクリームを、濃厚でキレの良い黒胡麻の魅力がつまったサブレでサンドしたモダンな最中のような味わい。
ピスタチオ羊羹
「ピスタチオ羊羹」は瑞々しく、それでいてピスタチオのねっとりとした旨味や舌を包み込むようなまろやかさも感じられる、寿里さんならではの仕上がり。
白姫
季節限定のお菓子も絶品です。特に冬限定の苺大福「白姫」も私のお気に入り。チョコレート餡がうっすら透けるほど繊細な求肥を纏わせることにより、和の旨味からチョコレートの洋の面影を感じ、フレッシュな苺の果汁が口の中で花開いたかと思えば、最後はあんこらしい甘味で締めくくり。
個々のパーツのおいしさを舌で楽しみながら、最後には可憐な苺の甘酸っぱさが全てを洗い流してリセット。また次のひとくちを楽しみたくなるような心地よさです。
寿里さんの和菓子は、いずれも素材のポテンシャルを存分に引き上げた味わいかつ、甘さも控えめで「このお菓子のここを味わってほしい、みてほしい」という思いがダイレクトに伝わってくるものばかり。それでいてほんのりリキュールの芳香が鼻をくすぐる、大人な一面も。
豊かな感性と表現力は、固定概念に縛られることなく、時に可愛らしく時に美しくお菓子に反映されています。
繊細な練り切りを生み出す寿里さんですが、和菓子屋さんに就職されたことはなく、もともと西日本を中心にカフェの立ち上げを担っていたとのこと。日々時間に追われる激務の中で、季節の移ろいと安らぎのひと時を教えてくれたのが和菓子であり、上生菓子、特に練り切りの美しさと食べたら無くなってしまう儚さの虜に。
もっと和菓子の魅力を沢山の人たちに知ってほしい、触れてほしいという思いから一念発起。カフェやbarのスタイルを取り入れ、普段和菓子に馴染みのない人達も口にするきっかけになるようなものを作りたいと試行錯誤を繰り返し、看板商品のひとつでもあるチーズを使用した練り切り「嬉々」が誕生。和洋どちらの魅力も兼ね備えた嬉々は、お茶やコーヒーだけではなく、お酒とのペアリングも楽しめるまさに「練り切りの入り口」ともいえるような銘品です。
春:寒氷・ネモフィラ・ピスタチオ羊羹
和菓子屋さんの練り切りは、老舗であれば代々伝わる図録、いわゆる「練り切りの設計図」のようなものが伝わっていたり、一般的に普及しているものもあります。ですが、寿里さんはその垣根を超えて、「可愛いな」「綺麗だな」と思ったものを自分なりに表現しているとのこと。
休日や束の間の気分転換のお散歩で出会った草花や風景、そこから閃いたインスピレーション、ご自身が「わくわくするようなときめき」を映し出していきます。例えば、雨上がりの紫陽花にきらりと光る滴を寒天で表現してみたり、練り切りに兎のデザインを盛り込んでみたりと、創意工夫をこなした意匠を作り上げています。
スタイリッシュな空間でシンプルな黒のシャツに身を包むお洒落な寿里さんですが、とても可愛らしい一面も。「絵心がないので(和菓子のデザインを)図面に起こしたりはしないです(笑)」と伺った時のギャップといったら。
夏:来る暮れ・桃・紫陽花
今回「かんたんなゆめ」の寿里さんを取材したいと思ったきっかけは、私の和菓子に対する思いとの共通点が多かったというのも大きな理由です。
「なんだかんだシンプルなお饅頭が一番好き」、「お散歩が好き」そして、「公園や川沿いなど、季節を感じながら和菓子を食べる楽しみが広まってほしい」ということ。
海外では、例えばドーナツやパン1個とコーヒーを手に、公園のベンチで一息ついている人達がよく見受けられるような気がします。日本でも、昨今のパンやドーナツブームによりパンを片手に美味しいコーヒーを公園で楽しむ人達が増加したのではないでしょうか。ですが、四季の彩を取り入れた練り切りを公園で食べている人というのは、パンや洋菓子に比べるとまだまだ少ないではないかと思うのです。
秋:栗の実・イチョウ・琥珀糖
一年を通して味わった寿里さんが作る数々の和菓子と、ストンと肩の力が抜ける癒しのひと時、そしてカウンター席で和菓子を中心に自然と広がる知らない人達との会話…
「日々の生活に寄り添える存在の和菓子」でありたいと寿里さんが語るよう、「かんたんなゆめ日本橋別邸」は伝統と革新が美しく交わる場所だと思います。
冬:ピスタチオ羊羹・白姫・寒氷
さて、冒頭で日本橋での営業は2023年2月頃までとお伝えしましたが、実は2023年春以降に、瀟洒な都会のお忍びエリアともいえる奥渋にて営業を再開なさる予定です!
店名の由来となっている中国の故事”邯鄲の夢”。
人生は儚い一瞬の出来事のようだ、という言葉に応えるように「だからこそ今を大切にしたい」と語る寿里さん。
お江戸日本橋でみる甘い夢の続きは、豊かな自然と四季の息吹を感じられる奥渋にてまた会いましょう。
かんたんなゆめ日本橋別邸
東京都中央区日本橋室町1-6-7 3階
050-5362-1781
水・木・金 18時~23時(L.O 22時)
土・日 13時~17時(L.O 16時30分)
月・火・不定休
Instagram
※予約は電話もしくはinstagramのDMより
※年明けは不定休が多くなる見込みのため月毎のスケジュールはinstagramより要確認とのこと。
地域企業・団体に協賛いただいてます