明治43(1910)年創業の「御菓子司 ときわ木」さん。永代通りから一本入った江戸もみじ通りにて開業、その後戦災に伴い昭和通りにお店を移し数十年営業した後、現在の場所に移転なさいました。初代・森確蔵さん、二代目・常太郎さん、そして現在は三代目の宗一郎さんが奥様と一緒に暖簾を守り続けています。
~ 内緒にしたい、けれど沢山の人に伝えたい!ビル群の狭間に凛と佇む正統派 ~
明治43(1910)年創業の「御菓子司 ときわ木」さん。永代通りから一本入った江戸もみじ通りにて開業、その後戦災に伴い昭和通りにお店を移し数十年営業した後、現在の場所に移転なさいました。初代・森確蔵さん、二代目・常太郎さん、そして現在は三代目の宗一郎さんが奥様と一緒に暖簾を守り続けています。
ホームページもSNSも無いときわ木さん。予約や問い合わせは電話のみですが、それでも多くのお客様からより熱い支持を受けていらっしゃいます。
そんなときわ木さんには「無い」ものがもう一つ。
実はときわ木さんは店内にショーケースが無いというちょっと珍しいお店。普通の店舗はショーケースから商品を選んで詰めて頂くものですが、ときわ木さんでは木の重箱に詰めたものを見せてくださいます。
三段の重箱がぱかっ、ぱかっと開いていく度に、目の前に広がる色彩に心がときめき、自然と口元も綻びます。
この方式は創業時から続いているとのこと。重箱は二代目で、ところどころ色が落ちている部分もその手仕事を物語るアクセントになっています。
さて、ときわ木さんでは四季の移ろいに合わせた多彩な上生菓子が用意されてますが、定番商品もあるんです!
今回は、長年のファンも多い「黒まんじゅう」をいただきました~!
初めて目にした時、思わず二度見してしまったことを今でも忘れられません。
やや青みがかった澄んだ白い皮に刻まれた、「黒」の焼き印。
白いのに、黒…って、どういうことなんだろう?と、興味を惹かれました。
手の中心、真ん中三本指の先にそっとのせると確かに感じる重み。期待が高まります。
フィルムを開くと、ふわっと立ち上る薯蕷(じょうよ)饅頭独特の薫香。肩の力がストンとぬけるこの感じ、よく蒸かされたお饅頭の醍醐味です。
試しに割ってみると、微かに聞こえるメリッという音。それもそのはず。きめ細やかで隙間なくたっぷりと包まれたこしあんは、艶感溢れる瑞々しさ。しっとりとした質感が、口に入れる前から伝わってきます。
そのままぱくり、としますと、目が醒めるほどの鮮烈な黒糖の香りに誰しもがきっと驚くはず。楚々とした見た目からは想像もつかない強烈な色香にしばし呆然。
けれど、すぐに一体化する丁寧に練り上げられたこしあんと皮の旨味。しばらく口の中で転がせば、じゅわりと消えてしまう儚さすら覚えます。
このサイズのお饅頭は、物足りなさを感じて、もうひとつと手が伸びるものが多いのですが、黒まんじゅうには「もう一度この衝撃を味わいたい」という、食べた人を虜にする魅力がぎゅっと凝縮されていました。
現在は三代目の宗一郎さんと奥様がお二人でお店を切り盛りしてらっしゃいます。
商品は当日売り切り。朝早くから大忙しです。
その御菓子も全てお父様の二代目・常太郎さんから教わったもの。多くは語らず、背中を見て覚えてほしいという方だったとか。明治より伝わる初代の技法が、時を経て令和の今日まで一子相伝で紡がれています。
「あんこだけは手を抜くな」という先代からの言い伝えを守り、夏は汗だくになりながら拘りを持って宗一郎さんが炊き上げていらっしゃるそうです。
基本的には宗一郎さんが製造担当ですが、先ほど紹介した黒まんじゅうは、奥様が包餡(皮の生地であんこを包むこと)を担当することもあるのだとか。歴代の奥様も黒まんじゅうの包餡を担当していたとのことで、まさに夫婦の愛情が詰まった自慢の逸品。
今回お話しをお伺いすることができ、より一層黒まんじゅうのファンになりました。
実はご夫婦がお二人で店頭に立たれるお店はあまり多くありません。商品を包んでくださる間に垣間見える三代目ご夫婦が並んでいる足元。私はその光景を拝見するのが大好きなんです。
和菓子と真摯に向き合う熱意と、お二人の絆を感じられる「ときわ木」さん。
内緒にしたいような、けれど、沢山の人にお伝えしたいお店です。
御菓子司 ときわ木
東京都中央区日本橋1-15-4
03-3271-9180
9時30分~17時30分
定休日 水曜・土日祝
東京メトロ「日本橋」駅D2出口より徒歩1分
地域企業・団体に協賛いただいてます